大阪信愛生命環境総合研究所(OSILES)

論文集「人と環境」(Human and Environment)

Vol. 16 (2023)


小学校教育におけるデータ・リテラシー要素の検討[論文]
市川 隆司 pp. 1-7 [要約][全文PDF]

中途障害者の生き辛さと生きる意欲[論文]
徳珍 温子 pp. 19-20 [要約][全文PDF]

COVID-19感染拡大における看護学生の学習意欲とキャリアレディネスに関する研究[論文]
泉 抽岐 pp. 21-33 [要約][全文PDF]




小学校教育におけるデータ・リテラシー要素の検討

市川 隆司 pp. 1-7

ビッグデータの活用やAIの進化により国家的な戦略に基づいてデータサイエンス教育に注力する状況が生まれている。 小学校では2020年度より改定された学習指導要領が全面施行されている。 その中で算数科の内容に各学年で「データの活用」が追加された。 海外においてもこれまでの統計教育からデータサイエンスを踏まえた教育に関して内容の検討が進められている。 本研究では学習指導要領の内容と米国や英国での報告書を比較検討して、データ・リテラシー育成に必要となる要素を検討した。 学習指導要領においては「データの活用」に関して身近なデータを収集して理解することに始まり、 データの可視化に取り組み、代表値を理解してデータの特徴を捉えるまで学習が進められる。 目的に応じたデータの収集から統計的な方法を活用して問題解決につなげる段階的なデータ活用の学習が確認できた。 同時に海外におけるデータ・リテラシーとの共通点が見られることが理解できた。

キーワード:データ・リテラシー 小学校 算数科 統計教育

Takashi Ichikawa:
A Study on Elements of Data Literacy in Primary School Education
Human and Environment Vol. 16, 1-7 (2023)


中途障害者の生き辛さと生きる意欲

徳珍 温子 pp. 9-20

本研究は、中途障害者が社会の中で主体性を失わない生活を送るために、 日常的な生命活動の保障だけでなく、「生きづらさ」や「生活しづらさ」を軽減する支援方法を明確にすることを目的としている。 脳血管障害者を対象に「辛いと感じること」「生きる意欲」についてインタビューを行い、 インタビューで得られたデータをテキストマイニングソフトを用いて分析した。インタビュー結果から、 重要他者、社会経済的活動が肯定的・否定的両側面を持つ事項であることが示唆された。 否定的側面として、社会的障壁、身体的機能があることが、 肯定的側面では、夢や目標という新しい生き方を提示する語りがあることが示唆された。

キーワード:中途障害者・生き辛さ・生きる意欲

Atsuko Tokuchin:
Motivation for Life Amid the Difficulty of People Became Handicapped in the Course of their Lives
Human and Environment Vol. 16, 9-20 (2023)


COVID-19感染拡大における看護学生の学習意欲とキャリアレディネスに関する研究

泉 抽岐 pp. 21-33

COVID-19感染拡大により学生を取り巻く学習環境や生活が大きく変わった。そこでCOVID-19感染拡大が看護学生の生活様式、食生活、学習意欲、キャリレディネスにどのように影響を及ぼしているかを調査し、また実習経験が看護学生の学習意欲、キャリアレディネスに及ぼす影響を明らかにし、今後の看護の学びやキャリアレディネスの向上にむけて、課題や適切な介入方法を見出すことを目的とした。 A短期大学看護学科2020年度の1〜3年生217名に対して生活様式、食生活、学習意欲、キャリアレディネスの尺度を作成し、COVID-19感染拡大前後について質問紙調査法を実施、ウィルコクソン符号付順位検定で分析をした。また、実習を経験した2021年度の新3年生に対し学習意欲とキャリアレディネスの質問紙調査法を実施、マン・ホイットニーU検定で分析をした。  COVID-19感染拡大の外出自粛や感染対策は、多くの国民と同様に看護学生の生活様式や食生活の行動に影響を及ぼしていたことが明らかとなった。またオンライン講義等の学習環境の変化によって学習意欲尺度【集中力・持続力因子】の低下を招いていた。キャリアレディネス尺度では、臨地実習に行けなかった3年生の向上はなかったが看護学生全体で感染拡大後に向上がみられた。そして、看護学生の実習経験は学習意欲尺度【集中力・持続力因子】を向上させた。2年生時に低かったキャリアレディネス尺度が、実習を経験することで【関心性】【自律性】【計画性】に向上がみられ、実習が学習意欲、キャリアレディネスに影響を及ぼしていることが明らかとなった。COVID-19感染拡大が続き、今後の看護教育は「ウィズコロナ」で学習環境が整えられていくと考えられ、学生の「看護を学びたい」いう意欲を受け止め、感染対策の看護技術習得を徹底し臨地実習につなげていくことが大切である。また生活の場に看護実践を広げ、キャリアレディネスの向上につながる看護の発見や興味を持てる介入が必要であると示唆された。

キーワード:COVID-19・看護学生・学習意欲・キャリアレディネス

Yuzuki Izumi:
A Study on Learning Motivation and Career Readiness of Nursing Students in the COVID-19 Pandemic
Human and Environment Vol. 16, 21-33 (2023)


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