大阪信愛生命環境総合研究所(OSILES)

論文集「人と環境」(Human and Environment)

Vol. 9 (2016)


動物の染色体と核型 [解説]
高井明徳 pp. 1-16 [要約][全文PDF]

問題行動と生徒指導
「困っている子」の視点と指導に向けて
―障害のある子どもの事例を中心に―
 [論文]
智原正行 pp. 17-23 [要約][全文PDF]




動物の染色体と核型

高井明徳 pp. 1-16

染色体はDNAの担体であり、細胞分裂の中期に最も凝縮し、特有の形態を示す。 中期染色体の形態的特徴に基づき染色体構成を示したものが核型である。 核型は原則として種に固有のものである。従って核型研究は、進化系統学的研究において重要な役割を果たしてきた。 動物の染色体研究の本格的な発展は1956年のTijoとLevanによる新しい染色体標本作製法による ヒトの染色体数2n = 46の解明に端を発している。 新しい染色体標本作製法により明瞭な染色体像を得て正確な染色体数の算定が可能になり、 核型も明確に示されるようになった。1970年代に入り、Q-バンド染色をはじめとした染色体分染技術が開発され、 染色体分析の精度は大きく向上した。最近ではFISH法による染色体分析が進み、 新たな染色体研究が進展している。本稿では、進化系統学的研究を目的とする動物の染色体研究を行う上での基礎として、 中期染色体の構造と形態的特徴、核型と核型変化、および関連事項について解説する。

Akinori Takai:Animal Chromosomes and Karyotypes.
Human and Environment Vol. 9 (2016)


問題行動と生徒指導
「困っている子」の視点と指導に向けて
―障害のある子どもの事例を中心に―


智原正行 pp. 17-23

障害のある児童の事例から、①何が問題行動とされるのか、②問題行動が伝えるもの、訴えるものは何か、 ③その把握の分析結果から導き出された対応・支援の方法を述べ、④事例検討から得られた知見を手がかりに、 特別支援教育の中でおきる問題行動をどうなくすかでなく、心のうちにある思いや願いを読み解き、 より適切な生徒指導の在り方を考察した。 問題行動と見られる行動は、本人からしてみれば意味ある行動をとっていることであり、 その行動をするだけの理由がある。今、1学級に6.5%在籍しているとされる発達障害のある児童生徒たちは、 通常の学級の集団生活の中でつまずきや困難を示している場合が多く、 教員から、「困った子」「問題児」と見られやすい。 一つ一つの行動の持つ意味を深く読み解くことによって「困った子」から「困っている子」へと視点が変換する。 この視点の転換は、障害があるなしにかかわらず子どもを理解する上で重要な考え方である。 指導にあたって、「身体化」「行動化」「言語化」された行動を理解せず、 懲戒という名の下で、力ずくの指導、感情に任せた叱責、表面に表れた行動のみに目を向けた対応などがあってはならない。

キーワード:

Masayuki Chihara:Problem Behavior in Children and Guidance: Guidance Taking into Consideration the Point of View of Children in Need - Cases of Children with Disabilities -.
Human and Environment Vol. 9 (2016)

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