w

大阪信愛生命環境総合研究所(OSILES)

論文集「人と環境」(Human and Environment)

Vol. 1 (2008)

2008.12.31

論文集「人と環境」発刊にあたって [巻頭]
高井明徳 pp. i [全文PDF]
 
小児看護学における「語り」の授業での学生の学び [論文]
中野幸子 pp. 1-5 [要約][全文PDF]
 
日本における看護師の役割―イメージと現実― [評論]
籔内順子 pp. 7-10 [要約][全文PDF]
 
園芸療法の実践科学とエビデンスの狭間で-園芸療法士の視点から- [評論]
寺田裕美子 pp. 11-13 [要約][全文PDF]
 
脊髄損傷者の褥瘡発症と対処の特徴―病院初発者と自宅初発者・健康段階別の比較を中心として― [論文]
瀧本美佐子・神戸美輪子・坂本雅代 pp. 15-21 [要約][全文PDF]
 
新生児用紙おむつの換気必要量 [論文]
上田博之・松平光男 pp. 23-28 [要約][全文PDF]
 
大学生における動機づけと基本的要求の充足およびウェルビーイングの関連 [論文]
田中希穂・井内伸栄 pp. 29-35 [要約][全文PDF]


人と環境発刊にあたって [巻頭]
高井明徳 pp. i


小児看護学における「語り」の授業での学生の学び [論文]

中野幸子 pp. 1-5

本研究は、「語り」の授業により看護学生の子どもに対する コミュニケーション能力を高めることを目的として、 3年課程の2年次の看護学生を対象に「語り」の授業を実施し、 授業後に実施した自由記述のレポートから、 学びの内容およびその効果を明らかにしようとした。 レポートは最小の文脈に区切り、4つのカテゴリに分類した。 最も多くの文脈が分類されたカテゴリは、 「語りを実施しての思い」(40.0%)であり、次いで「学びと願望」(29.8%)、 「話の創作」(12.6%)、「仲間の語りを聴いて」(12.4%)であった。 各カテゴリにおいて最も多い内容は、 「語りを実施しての思い」では『難しい』(82.4%)、 「学びと願望」では『感情を込める』『引きつける』(24.3%)、 「話の創作」では『悩んだ』(70.5%)、 「仲間の語りを聴いて」では『もっと聴きたい』(87.5%)であった。 これらの結果より、学生は、子どもをイメージし子どもにわかりやすく 伝えることができる言葉や話し方、 さらに話の内容をとても難しく感じながらも、 話し手聞き手の両者の体験をすることにより、 子どもとの好ましいコミュニケーションとなる 具体的な表現の方法を学ぶことができたことが示され、 学生が子どもとのコミュニケーション能力を高める上で 「語り」の授業が効果的であることが明らかにされた。

キーワード:語り・コミュニケーション・表出・体験学習・小児看護学

Sachiko Nakano:
Study on "Story Telling" by Student Nurses in Pediatric Nursing Class.
Human and Environment Vol. 1 (2008)


日本における看護師の役割―イメージと現実― [評論]

籔内順子 pp. 7-10

近年、女性の仕事に対する意識や価値観は変化してきた。 その中で専門職である看護師を目指す女性が増加している。 しかし、看護師に対するイメージは現実とかけはなれたものとなっている。 そこで、日本における医療の歴史から考える看護師の役割、 コメディカルの中の看護師の役割、患者・医師・看護師間における 看護師の役割、看護師のイメージと現実における看護師の役割と比較から、 看護師の役割とは何かを検証する。

キーワード:看護師の役割 看護の専門性 看護師独自の機能

Junko Yabuuchi:
The Role of Nurse in Japan-Its Image and Reality.
Human and Environment Vol. 1 (2008)


園芸療法の実践科学とエビデンスの狭間で-園芸療法士の視点から- [評論]

寺田裕美子 pp. 11-13

Yumiko Terada:
Between the Practiceand Evidence of Horticultural Therapy.
Human and Environment Vol. 1 (2008)


脊髄損傷者の褥瘡発症と対処の特徴―病院初発者と自宅初発者・健康段階別の比較を中心として― [論文]

瀧本美佐子・神戸美輪子・坂本雅代 pp.15-21

本研究の目的は、脊髄損傷者が健康段階別に発症する褥瘡の特徴と 、病院初発者と自宅初発者で褥瘡発症時の対処行動に違いがあるか どうかを明らかにすることである。脊髄損傷者は褥瘡を合併しやすく、 本研究でも9割近くの脊損者が褥瘡発症を経験していた。4人に3人 が入院期間中に褥瘡発症を経験しており、その9割近くが病院 臥床期の発症であった。病院初発者と自宅初発者との比較では、 病院初発者は頸髄損傷者の割合が高く、仰臥位で体圧がかかる 仙骨部に多く発症しているのに対して、自宅初発者は腰髄損傷 者の割合が高く、座位時に体圧がかかる坐骨部に多く発症 している違いがみられた。また、今まで経験した褥瘡 の程度では、どちらも[皮膚から液や膿が出た]ことがある人が多く、 特に仙骨部や坐骨部などの殿部に深い褥瘡を経験する人が多く、 特に自宅初発者では殿部にひどい褥瘡が発症する割合が高かった。 対処行動については、褥瘡初期段階である[皮膚が赤くなる]で、 自宅初発者は専門家に対処を求める人が病院初発者に比較して有意に多かったが、 より深い褥瘡への対処行動には両群に差は認められなかった。 しかしながら[床ずれで熱が出たとき]にも自己対処する人が どちらも少数ながらみられ、脊損者の褥瘡という身体的・局所的な視点だけでなく、 脊損者の生活の質といった精神的・社会的な視点も含め包括的なとらえ方が 必要なのではないかと考えられた。

キーワード:脊髄損傷者・褥瘡・褥瘡発症経験・褥瘡発症状況・褥瘡発症時の対処行動

Misako Takimoto,Miwako Kanbe and Masayo Sakamoto:
Characteristics of the pressure ulcer pathogenesis and coping behavior in patients with spinal cord injuries: comparison by patient health status and first-onset location of pressure ulcer symptoms.
Human and Environment Vol. 1 (2008)

 
新生児用紙おむつの換気必要量 [論文]

上田博之・松平光男 pp. 23-28

紙おむつ内気候の湿り気を紙おむつ換気量で評価するための基準として, 紙おむつ内気候に蒸発する水分を放散するための換気必要量を求めた. 市販の3製品を用いて,試料実験により単位面積あたりの蒸発量を, マネキン着用実験により液体拡散面積と紙おむつ換気量を測定した. 単位面積当たりの蒸発量に製品間の差はみられなかった. 着用実験で吸水増加により液体拡散面積は増加,紙おむつ換気量は減少したが, 製品間の差は液体拡散面積の最も少ない吸水条件だけでみられた. また,吸水による液体拡散面積の増加と紙おむつ換気量の減少は高い 相関関係を示したが,回帰直線の傾きは製品により異なった. これらの結果から,紙おむつ内気候の湿り気を評価するためには, 吸水した紙おむつから紙おむつ内気候に蒸発する水分量と 紙おむつ内気候の蒸発水分を紙おむつ外に放散する換気量の両方を 勘案すべきであると考えた. そこで,吸水した紙おむつの単位面積当たりの蒸発量と液体拡散面積の積を 紙おむつ内に蒸発し得る水分量とし, この蒸発水分を放散するための換気必要量を求めた. この換気必要量に対する紙おむつ換気量の充足率で評価を試みたところ, 液体拡散面積や紙おむつ換気量だけで捉えられなかった 製品間の差を捉えることができた.

キーワード;紙おむつ・衣服換気量・衣服気候・湿り気

Hiroyuki Ueda, Mitsuo Matsudaira:
Required Ventilation for Newborn Baby Diapers.
Human and Environment Vol. 1 (2008)


大学生における動機づけと基本的要求の充足およびウェルビーイングの関連 [論文]

田中希穂・井内伸栄 pp. 29-35

内発的動機づけ理論の1つである自己決定理論を基盤とした研究では, その中心的概念である基本的要求(コンピテンスへの要求, 自律性への要求,関係性への要求)と自律的動機づけの両方を取り上げ, 動機づけプロセスを包括的に検討している研究はあまりない。 そこで,本研究では,大学生175名(男性71名,女性104名)を対象に, 学業活動に対する動機づけおよびそれ以外に打ち込んでいる 活動に対する動機づけと, 全般的な基本的要求の充足の程度やウェルビーイングとの 関連について検討した。 大学生の学業に対する自律的な動機づけおよびコンピテンス要求と 関係性要求の充足は人生に対する満足感やポジティブ感情を促進する一方, 学生が打ち込んでいる活動に対する自律的な動機づけや自律性要求の充足は ネガティブ感情を抑制する傾向があった。 3つの基本的要求の充足はウェルビーイングの異なる側面に 働きかけることが示唆された。 これらの結果より,大学生のウェルビーイングの促進には, 学生を学業に動機づけるだけではなく,それ以外の活動にも動機づけ, その中で基本的要求が充足されることが望まれる。

キーワード:自己決定理論・動機づけ・基本的要求・ウェルビーイング

Kiho Tanaka, Nobue Iuchi:
Relation between Motivation, Basic Need Satisfaction, and Well-being in Undergraduate Students.
Human and Environment Vol. 1 (2008)

↑Top