大阪信愛生命環境総合研究所(OSILES)

論文集「人と環境」(Human and Environment)

Vol. 13 (2020)


短期大学生を対象にした造形活動における「触覚」についての試み- 領域「表現」"様々な素材"に着目して - [論文]
東本 康栄 pp. 1-10 [要約][全文PDF]

保育者・教員養成機関での新しい授業デザインの研究 ―資質・能力育成を念頭に置いた楽器の音探索から奏法獲得へ― [論文]
津田 奈保子 pp. 11-21 [要約][全文PDF]

幼稚園年長と小学1年生の表現の比較から ―絵本・オノマトペから音へのイメージ化を通して― [論文]
津田 奈保子・東本 康栄 pp. 23-33 [要約][全文PDF]




短期大学生を対象にした造形活動における「触覚」についての試み- 領域「表現」"様々な素材"に着目して -

東本 康栄 pp. 1-10

領域「表現」の"様々な素材"という文言に着目すると、造形表現においては素材に触れる感覚-「触覚」が重要だと捉えた。そこで本研究では保育士・保育教諭・幼稚園教諭・小学校教諭をそれぞれ目指している学生を対象に2回の触覚体験を試みると共に、 "様々な素材"の意図を考えていくことにした。触覚体験の結果、学生たちは触覚がもたらす力や大切さを実感し、日常生活や造形表現で重要な働きをしていると気づくと同時に保育者・教師としての視点も学び得られたことが分かった。素材の触れ心地などを実感する経験が造形表現の源だといえ、保育者・教師は乳幼児期の子どもたちにあらゆる外の世界を知り視野を広げる豊かな経験ができるように、"様々な素材"を用いて橋渡しをしていくことが大切なのである。また、子どもの思いの実現に沿えるような支援や環境作りなどの在り方も"様々な素材"には込められているのだと捉えた。

キーワード:造形活動・触覚・領域「表現」・様々な素材

Yasue Higashimoto:
How Touching Experiences Enrich Student's Creative Activity, a Case of Japanese Woman's College Students.
―An Interpretation of "Various Materials" from the Area "Expression", Pre-School Curriculum ―.
Human and Environment Vol. 13, 1-10 (2020)



保育者・教員養成機関での新しい授業デザインの研究 ―資質・能力育成を念頭に置いた楽器の音探索から奏法獲得へ―

津田 奈保子 pp. 11-21

幼児教育・小学校教育で自ら楽器に向かい、音に向き合い、感じることを重視するならば、保育者・教員養成においても音探索をする器楽教育が必要である。その中で教授するための奏法の獲得も考慮した授業構成が必要であろう。本研究においては、学生がアクティブラーニングで楽器探索を行い、アンサンブル等で探索経験を生かすことで、保育者・教員として知っておくべき奏法の獲得が出来るのかどうか検証した。自由に使う時間を確保し自らが楽器の特徴を発見し、それを踏まえて曲で生かす経験が奏法獲得につながったと考える学生が多いことがわかった。合奏では高度な技術が不要である内容をすることで、学生自身が楽器の特徴でもある音色に焦点を絞り工夫を凝らすことが分かった。これからの時代を担う学生たちに、旧態依然の楽器指導と合奏だけをしていては、楽器が嫌いな学生や、苦手意識をもつ学生たちが出現し、現場に出た学生の悪影響が懸念される。学生自身が、考え、試行し、工夫し、楽しみ、音に着目する授業を提供することが、これからの幼児教育・小学校教育を変えることにもつながるであろう。

キーワード:器楽・音探索・授業デザイン・資質能力育成・奏法獲得

Tsuda Nahoko:
Study on New Class Design at Childcare / Education Organization:
Consideration of Musical Instrument Sound Search with Competency in Mind.
Human and Environment Vol. 13, 11-21 (2020)



幼稚園年長と小学1年生の表現の比較から ―絵本・オノマトペから音へのイメージ化を通して―

津田 奈保子・東本 康栄 pp. 23-33

本稿では幼稚園5歳児と小学校1年生対象に、イメージ形成の特徴を明らかにする。絵本を見てつけたオノマトペと、絵本を見てつけた楽器の音を比較検討した。子どもたちがイメージして考えた言葉が擬音語であると楽器の音をつけやすく、擬態語であると難しくなる傾向が窺えた。幼児は絵を動画的に捉えて、オノマトペや楽器の音をつけること、そして動きの時間の幅を示すことが困難であるのに対して、小学校の児童はそれらをも比較的上手に言葉や音で表現した。子どもがどのように音をつけるかは、どのような材質をイメージするかによって変化する。より豊かな経験をすることが、具体的な材質のイメージをいだきやすくする。

キーワード:オノマトペ・擬音語・擬態語・音・幼小連携

Nahoko Tsuda and Yasue Higashimoto:
Comparison of Expressions between Preschool Students and Elementary School Students: Through Depicting a Picture Book and Words by Creating Sounds.
Human and Environment Vol. 13, 23-33 (2020)


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